一人会社の算定基礎届と定時決定

2026 年 10 月 19 日(2026 年 10 月時点の制度で書いています)

一人会社の代表も、会社から役員報酬を受けていれば健康保険・厚生年金保険に入ります。その保険料は、毎月の役員報酬そのものではなく「標準報酬月額」で決まります。標準報酬月額がいつ決まり、いつ変わるのか、役員報酬を変えた年に何を届け出るのかを説明します。

保険料は標準報酬月額で決まる

標準報酬月額は、報酬月額を等級の表に当てはめた額です(健康保険法 40 条、厚生年金保険法 20 条)。たとえば報酬月額が 29 万円以上 31 万円未満なら、標準報酬月額は 30 万円です。毎月の保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けた額になります(健康保険法 156 条、厚生年金保険法 81 条)。

「報酬」には、名前を問わず労務の対償として受けるものが入りますが、臨時に受けるものと、3 か月を超える期間ごとに受けるもの(賞与)は入りません(健康保険法 3 条 5 項)。役員報酬を毎月同じ額で払っている一人会社なら、報酬月額はほぼその月額です。通勤手当を払っていれば、それも報酬に入ります(日本年金機構の Q&A)。

標準報酬月額が決まる 3 つのとき

いつどう決まるかいつまで使うか届出
入ったとき(資格取得時決定)入った日の報酬の額からその年の 8 月まで(6 月 1 日以降に入った人は翌年の 8 月まで)資格取得届
毎年 7 月(定時決定)4 月・5 月・6 月に受けた報酬の平均から9 月から翌年の 8 月まで算定基礎届(7 月 10 日まで)
報酬が大きく変わったとき(随時改定)変わってから 3 か月の報酬の平均からその年の 8 月まで(7 月以降に改定したときは翌年の 8 月まで)月額変更届(速やかに)

根拠は、資格取得時決定が健康保険法 42 条・厚生年金保険法 22 条、定時決定が健康保険法 41 条・厚生年金保険法 21 条、随時改定が健康保険法 43 条・厚生年金保険法 23 条です。

法人成りした年は、会社で社会保険に入ったときの役員報酬で標準報酬月額が決まり、その後は毎年の定時決定で見直されます。役員報酬を変えなければ、毎年同じ額で届け出ることになります。

算定基礎届(定時決定)

7 月 1 日に使用している被保険者について、4 月・5 月・6 月に受けた報酬の総額を月数で割った額を報酬月額にして、9 月から翌年 8 月までの標準報酬月額を決めます(健康保険法 41 条 1 項・2 項、厚生年金保険法 21 条 1 項・2 項)。報酬の支払の基礎になった日数が 17 日未満の月は、平均から除きます。

役員報酬を変えていない一人会社なら、4 月から 6 月の報酬は同じ額なので、平均もその額です。標準報酬月額は変わらないことが多いですが、届出は毎年必要です。

役員報酬を変えたとき(随時改定と月額変更届)

継続した 3 か月に受けた報酬の平均が、今の標準報酬月額の元になった報酬月額と比べて著しく変わったときは、その翌月から標準報酬月額を改定します(健康保険法 43 条 1 項、厚生年金保険法 23 条 1 項)。3 か月とも、支払の基礎になった日数が 17 日以上でなければなりません。日本年金機構の案内では、次の 3 つがすべてそろったときです。

  1. 昇給・降給などで、固定的な賃金が変わった
  2. 変わった月から 3 か月の報酬の平均で出した標準報酬月額が、今の標準報酬月額と 2 等級以上違う
  3. その 3 か月とも、支払の基礎になった日数が 17 日以上

改定は、変わった報酬を初めて受けた月から数えて 4 か月目からです。届出は、健康保険・厚生年金保険の被保険者報酬月額変更届を速やかに出します(健康保険法施行規則 26 条 1 項、厚生年金保険法施行規則 19 条 1 項)。

例:3 月決算の会社が、6 月支給分から役員報酬を上げた

役員報酬は、事業年度の開始から 3 か月以内に改定すれば、改定の前と後でそれぞれ同じ額を払う形で、定期同額給与になります(役員報酬の決め方)。3 月決算の会社が、6 月の社員総会・株主総会で月 30 万円から 50 万円に上げ、6 月支給分から払った場合です。

月役員報酬標準報酬月額すること
4・5 月30 万円30 万円
6 月50 万円30 万円改定した報酬を初めて受けた月(1 か月目)
7 月50 万円30 万円7 月 10 日までに算定基礎届。9 月に随時改定の予定なので「月額変更予定」に印を付ける
8 月50 万円30 万円6 月から 8 月の 3 か月がそろう
9 月50 万円50 万円4 か月目から改定。速やかに月額変更届

標準報酬月額 30 万円は健康保険の第 22 級・厚生年金保険の第 19 級、50 万円は健康保険の第 30 級・厚生年金保険の第 27 級で、2 等級以上違うので随時改定になります。厚生年金保険料は月 54,900 円から 91,500 円に増え、本人と会社がそれぞれ 18,300 円ずつ多く負担します。

役員賞与(事前確定届出給与)を払ったとき

3 か月を超える期間ごとに払う賞与には、標準報酬月額とは別に「標準賞与額」で保険料がかかります。賞与の額の 1,000 円未満を切り捨てた額で、健康保険は年度(4 月から翌年 3 月)の累計で 573 万円まで(健康保険法 45 条 1 項)、厚生年金保険は 1 か月 150 万円までです(厚生年金保険法 24 条の 4 第 1 項、令和 2 年政令第 246 号)。賞与を払ったら、5 日以内に被保険者賞与支払届を出します(健康保険法施行規則 27 条 1 項、厚生年金保険法施行規則 19 条の 5 第 1 項)。

自分でするか、社会保険労務士に頼むか

役員一人で、役員報酬を毎月同じ額で払っている会社なら、算定基礎届は年に 1 回、同じ額を書いて出すだけのことが多く、自分でも出せます。従業員がいて残業代や手当が毎月変わる、短時間で働く人がいる、等級の上限・下限の近くにいる、といった会社では判断が増えるので、社会保険労務士にご確認ください。

SoloDeck で定時決定と随時改定を見落とさない

毎月の給与計算の記録から、4 月から 6 月の平均と新しい等級、随時改定にあたるかを判定してお知らせします。算定基礎届・月額変更届・賞与支払届の作成もできます(e-Gov での提出は準備中)。届け出たあと「報酬月額に反映」を押せば、改定した月の給与から新しい標準報酬月額で社会保険料を計算します。

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参考にした資料

役員報酬の決め方は一人会社の役員報酬の決め方、決算の進め方は合同会社の決算を自分でする流れをご覧ください。