一人会社のインボイスと領収書の保存

2026 年 10 月 20 日(2026 年 10 月時点の制度で書いています)

消費税を納める会社が、仕入や経費にかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、帳簿と、適格請求書(インボイス)などの請求書等を保存しておく必要があります。何を何年保存するのか、受け取ったインボイスで何を確かめるのか、インボイスが無い仕入はどうなるのか、メールで受け取った請求書をどう保存するのかを説明します。

何を、何年保存するか

税保存するもの期間
法人税帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)と書類(決算書・契約書・請求書・領収書など)確定申告書の提出期限の翌日から 7 年。青色欠損金が生じた年度は 10 年
消費税仕入税額控除のための帳簿と、受け取った請求書等課税期間の末日の翌日から 2 か月を過ぎた日から 7 年
消費税自分の会社が交付した適格請求書の写し同じく 7 年

根拠は、法人税が法人税法施行規則 59 条など(国税庁タックスアンサー No.5930)、消費税の帳簿と請求書等が消費税法 30 条 7 項・消費税法施行令 50 条 1 項、交付した適格請求書の写しが消費税法施行令 70 条の 13 です。

3 月決算の会社なら、法人税の申告期限は 5 月 31 日なので、6 月 1 日から 7 年です。消費税も、課税期間(事業年度)の末日の翌日から 2 か月を過ぎた日から 7 年で、同じころまでになります。消費税の帳簿と請求書等は、6 年目と 7 年目はどちらか一方だけを保存すればよい場合があります(消費税法施行令 50 条 1 項ただし書)が、法人税では書類も 7 年保存するので、合わせて 7 年と考えておくと迷いません。

受け取ったインボイスで確かめること

仕入税額控除を受けるには、原則として、相手が適格請求書発行事業者として交付した適格請求書を保存します(消費税法 30 条 7 項・9 項)。適格請求書には、次の 6 つが書かれています(消費税法 57 条の 4 第 1 項)。

  1. 交付した事業者の名前と登録番号(T から始まる 13 桁の番号)
  2. 取引の年月日
  3. 取引の内容(軽減税率の対象なら、その旨)
  4. 税率ごとに分けて合計した金額(税抜か税込)と、適用税率
  5. 税率ごとの消費税額等
  6. 受け取る側(自分の会社)の名前

小売業・飲食店・タクシーなど不特定多数を相手にする事業では、宛名(6)を省き、税額か税率のどちらかを書いた「適格簡易請求書」(簡易インボイス)でもかまいません(同条 2 項)。コンビニや飲食店のレシートに登録番号が印字されていれば、多くはこれに当たります。

登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で、本当に登録されているかを確かめられます。消費税額は、1 枚の請求書ごとに、税率ごとの合計額に 10/110(軽減税率は 8/108)などを掛けて、端数を 1 回だけ処理します(消費税法施行令 70 条の 10)。品目ごとに端数を処理した請求書は、適格請求書の要件に合いません。

インボイスが無くてもよい仕入

帳簿だけでよい仕入

インボイスをもらうのが難しい取引は、帳簿に「特例の対象であること」などを書けば、帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます(消費税法施行令 49 条 1 項、消費税法施行規則 15 条の 4・26 条の 6)。一人会社でよくあるのは次のものです。

少額特例(税込 1 万円未満、2029 年 9 月まで)

基準期間(2 期前の事業年度)の課税売上高が 1 億円以下、または特定期間の課税売上高が 5,000 万円以下の会社は、税込 1 万円未満の仕入なら、インボイスが無くても帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます。2023 年 10 月 1 日から 2029 年 9 月 30 日までの仕入が対象です(平成 28 年改正法附則 53 条の 2)。1 万円未満かは、品目ごとではなく 1 回の取引の税込金額で決めます。月ごとにまとめた請求書の合計で決めるのでもありません。

インボイスが無い仕入(免税事業者からの仕入)

適格請求書発行事業者でない相手(免税事業者など)からの仕入は、インボイスが無いので、本来は仕入税額控除を受けられません。経過措置として、仕入の日に応じて、消費税相当額の一定の割合を控除できます(平成 28 年改正法附則 52 条・53 条。令和 8 年度の改正で割合と期限が変わりました)。

仕入の日控除できる割合
2023 年 10 月 1 日〜2026 年 9 月 30 日80%
2026 年 10 月 1 日〜2028 年 9 月 30 日70%
2028 年 10 月 1 日〜2030 年 9 月 30 日50%
2030 年 10 月 1 日〜2031 年 9 月 30 日30%
2031 年 10 月 1 日から控除できない

2 割特例(納める消費税を売上の消費税の 2 割にできる特例)は、2026 年 9 月 30 日を含む課税期間までです。法人は令和 8 年度の改正でできた 3 割特例を使えないので、次の課税期間からは、本則の計算(インボイスの保存が要る)か簡易課税を選びます。2 割特例を使った次の課税期間は、その申告期限までに届け出れば、その期から簡易課税を使えます(国税庁 令和 8 年度税制改正特集)。簡易課税では、仕入税額控除のためのインボイスの保存は要りませんが、法人税のための領収書などの保存は要ります。

メールやウェブで受け取った請求書・領収書

メールに付いた PDF の請求書や、ウェブサイトからダウンロードした領収書は「電子取引」です。法人税のために、紙に印刷するのではなく、データのまま保存します(電子帳簿保存法 7 条)。2024 年 1 月 1 日からは、印刷した紙だけの保存は、原則として認められません(人手が足りないなど相当の理由があり、求められたときにデータと印刷した紙を見せられるときの猶予措置はあります)。データの保存では、次の 3 つを満たします(国税庁「令和 6 年 1 月からの電子取引データの保存方法」)。

紙で受け取った領収書は、紙のまま保存すればかまいません。スキャンや撮影をして紙を捨てるには、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件(解像度・タイムスタンプなど)を満たす必要があります。要件を満たす仕組みでないなら、撮ってデータにしたあとも、紙は捨てずに保存しておきます。

自分でするか、税理士に頼むか

仕入の相手が決まっていて取引の数が少ない一人会社なら、毎月の領収書と請求書を、データと紙に分けて保存していけば、自分でも対応できます。免税事業者からの仕入が多い、簡易課税と本則のどちらが有利か迷う、税務調査の対応が心配、といったときは、税理士にご確認ください。

SoloDeck で領収書・請求書を保存して、仕訳まで

領収書や受け取った請求書を撮ってアップロードすると、AI が読み取って仕訳の候補を作ります。登録番号の欄と「インボイスなし」の印があり、インボイスが無い仕入は、仕入の日の経過措置の割合(70% など)で消費税を計算します。書類は取引日・金額・取引先で検索でき、検索項目の訂正と書類の削除は操作ログに残ります。紙の領収書は、アップロードしたあとも紙のまま保存してください。

30 日間無料で試す

役員報酬をいくらにするかは、登録なしで使える役員報酬シミュレーターで比べられます。

参考にした資料

決算の進め方は合同会社の決算を自分でする流れ、役員報酬の決め方は一人会社の役員報酬の決め方をご覧ください。